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中小企業のための、後悔しない顧問社労士選びの「具体的なコツ」
社会変化や働き方の意識変化、そして法改正の増加に伴い、労務管理の重要性が増しています。そのため社会保険労務士へのニーズも高まってきたと感じております。 しかし企業の方がいざ社労士を探そうとすると、事務所の形態や得意分野があまりに多様化しており、自社に最適なパートナーをどう選べばよいか迷われることが多いのではないでしょうか。 社労士選びの失敗は、単なる事務手続きの遅滞にとどまらず、労務リスクの増大や助成金の受給ミス、さらには従業員のエンゲージメント低下を招く恐れがあります。 今回は、最近の社労士業界の潮流を踏まえ、企業の方が後悔しないための「顧問社労士の正しい選び方」について詳しく解説いたします。 この記事の監修者 近藤雅哉(社会保険労務士 / インプル社労士事務所 代表)社労士法人で最大35名のマネジメントを経験し、人事コンサルティングに特化した株式会社In-proveを設立。続けてインプル社労士事務所を立ち上げる。人事と労務の両面から中小企業の発展を支えている。 社労士事務所の専門性と特色を見極める かつての社労士といえば、労働保険や社会保険の手続きを代行する「手続きの専門家」としての側面が強かったのですが、現在は手続きに限らず特定の領域に特化した事務所が増えています。 そのため、自社が抱える課題が「守り(手続き・コンプライアンス)」なのか、それとも「攻め(組織開発・DX・資金調達)」なのかによって、選ぶべき社労士事務所の属性は大きく変わります。 顧問社労士のさまざまな属性 まず挙げられるのが、医療・介護、運送、派遣といった特定の業種に特化した「業種特化型の社労士事務所」です。これらの業界は独自の法令や商習慣、複雑な給与計算のルールが存在するため、業界特有の事情に精通した専門家は心強い味方となります。 また、給与計算や保険手続きの効率化を極めた「アウトソーシング特化型」や、最新のITツールを活用し、内製化の支援まで行える「DX特化型」も、組織の生産性向上を目指す企業には最適です。 さらに、助成金の申請支援に特化した事務所や、人事制度構築、IPO支援といった高度な意思決定を支える「コンサルティング特化型」も存在します。 個人向けのサービスに強い社労士事務所もある 一方で、障害年金などに特化した事務所は個人向け(BtoC)の性質が強く、経営者が顧問契約を結ぶケースは稀です。まずは、自社のフェーズにおいて「どの専門性」が最も必要なのかを明確にすることが、社労士選びの第一歩となります。 「個人事務所」か「社労士法人」か~組織形態によるメリットとデメリット~ 専門性の次は、組織形態を見ていきましょう。 社労士業界の約56%が一人事務所といわれており、個人事務所か、社労士法人かという選択も重要なポイントです。それぞれの特徴を理解し、自社の規模や求める安心感に照らして判断する必要があります。 個人事務所を選択する場合の視点 個人事務所の最大のメリットは、「代表が直接担当してくれる」という安心感にあります。担当者の交代がなく、経営者同士としての信頼関係を築きやすい点や、比較的柔軟で安価な料金設定が魅力です。一方で、対応領域がその個人の知識量に依存するため、案件が増加した際にレスポンスが遅れたり、万が一の病気や事故の際に業務が停止したりするというリスク(シングルポイント故障)があることは事実です。 社労士法人を選択する場合の視点 社労士法人のメリットは、組織としての「品質の安定性とノウハウの蓄積」があること。セキュリティ体制が整備されており、事務所内に多様な事例が共有されているため、難解なトラブルにも組織力で対応できます。一方で、料金が高くなる傾向があることや、担当者の異動・退職によって品質にムラが生じたり、その都度信頼関係を築き直したりする必要があるといったデメリットも存在します。 後悔しない社労士選びのための「3つの評価軸」 多種多様な選択肢の中から自社に最適な社労士を見極めるためには、単なる「費用の安さ」だけでなく、以下の3つのポイントを厳格にチェックすることをおすすめします。 1. 担当者が「経営者視点」を持っているか 社労士は単なる法規の解説者ではありません。法律を盾に従業員の権利だけを主張するのではなく、「どうすれば企業が持続的に成長し、利益を出せるか」という視点でアドバイスをくれるかどうかが重要です。 レスポンスの速さやミスの少なさは当然のこと、自社の離職率が低く、担当者が定着している事務所は、自らの組織管理ができている証左であり、信頼に値します。 2. 最新のシステム・テクノロジーに強いか 2026年現在、クラウド型の人事労務システムやチャットツールの活用は業務効率化の必須条件です。紙やFAXでのやり取りを強いる事務所や、システム導入に消極的な事務所は、将来的に貴社の事務負担を増大させます。 「クラウドツールへの対応が可能か」「ビジネスチャットでスピーディーな相談ができるか」といったデジタル対応力は、現代の社労士選びにおいて極めて重要な指標です。 3. 費用対効果(バリュー)の妥当性はあるか 顧問料は「コスト」ではなく「投資」です。一見安価であっても、何も提案がなく、手続きミスが多発するようでは、結果として高いコストを支払うことになります。逆に、高い顧問料であっても、それ以上の助成金受給や、労務トラブルの回避、採用力の向上をもたらしてくれるのであれば、それは価値のある投資といえるでしょう。 インプルが目指す「伴走型」の支援 社労士事務所は提供するサービスこそ同様のものが多くなりますが、代表(所長)の専門性や、スタンスによってカラーが大きく異なるものです。そのため定性的な「相性」という要素も重要です。 私たちインプル社労士事務所の強みは、徹底した「経営者・人事責任者のパートナーシップ」にあります。クラウドシステムをフル活用した圧倒的なレスポンスの速さと正確さはもちろんのこと、単なる手続き代行に留まらない「攻めの人事労務コンサルティング」を得意としています。 個人事務所ではありますが、代表1人で対応する体制ではありません。各分野に専門性を持つスタッフがチームとなり、最適な体制で継続的にサポートを行っております。 これまでに蓄積したノウハウと、顧問先ごとの課題への柔軟性を両立させ、離職防止や生産性向上に直結する解決策を提案するだけではなく、現在の顧問社労士とのお付き合いを継続しながらの「セカンドオピニオン」もご相談に乗っております。 貴社のシステム活用状況や労務リスクに基づいた最適なプランをご提案いたしますので、まずは相性を確かめていただくためにも、一度お問い合わせください。 プロのアドバイス、受けてみませんか? 社労士選びに正解はありませんが、「共に会社の未来を語れるか」というパートナーシップを築けること、人事労務を単なる業務で終わらせず会社を成長させるためのパートナーになれそうかという点を重視し、ベストな顧問社労士選びを行っていただければと考えております。インプル社労士事務所に一度ご相談ください。
【社労士解説】雇用保険「週10時間」へ加入ライン引き下げ。セーフティネット強化の裏で企業が直面する課題とは
短時間労働者に対する社会保険の適用拡大が話題ですが、もうひとつ、企業経営と人事戦略に大きな影響を与える重要な改正が控えています。それが雇用保険の適用拡大です。 2028年10月より、雇用保険の加入要件である週の労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に引き下げられる見通しです。この改正には多様化する働き方を支えるセーフティネットの強化という明確な目的がありますが、同時に企業側には新たなコスト負担と管理体制の構築を求めます。 今回は、この改正の意義と、社労士として見える「期待」と「懸念」、そして企業が今すぐ取るべき戦略について解説します。 この記事の監修者 近藤雅哉(社会保険労務士 / インプル社労士事務所 代表)社労士法人で最大35名のマネジメントを経験し、人事コンサルティングに特化した株式会社In-proveを設立。続けてインプル社労士事務所を立ち上げる。人事と労務の両面から中小企業の発展を支えている。 改正の背景にあるのは、多様な働き方を支える「セーフティネット」の構築 今回の雇用保険の加入要件引き下げは、主に以下の2つの大きな目的を持っています。 社会保険労務士としては、今回の週10時間への加入要件引き下げには基本的に賛成の立場です。 雇用保険は労働者が支払う保険料の負担額に比べて、受けられる恩恵(給付)が非常に大きいのが特徴です。特に育児休業給付金や教育訓練給付金は、短時間労働者のキャリア継続やスキルアップに直結します。 これまでセーフティネットの対象外だったパート・アルバイトの方が、週10時間以上働くことでこの恩恵を受けられるようになることは、労働者にとって大きなメリットであり、結果的に「安心感のある職場」をつくる後押しになります。 企業が直面する課題は、「還元原資」の減少 しかし、社会保険の適用拡大の記事でお伝えしたのと同様に、この改正が企業経営にもたらす影響として以下の懸念を抱いています。 それは、「会社負担の増加が、従業員への還元原資を圧迫する」可能性です。 雇用保険料は、企業と労働者が折半して負担する社会保険料とは異なり、会社側の負担割合が大きいのが特徴です。週10時間以上働く従業員が増えるほど、企業が負担する雇用保険料の総額は確実に増加します。 この法定福利費の増加は、企業が本来、賃上げや賞与、福利厚生などに回すことができた「還元できる原資」を減少させます。これは、人件費の上昇を上回る生産性向上や価格転嫁が実現できていない企業にとって、看過できない課題となります。 対策を打たずに放置したときの、3つのリスク 週10時間への引き下げに対して対策を打たずに放置することは、以下のリスクを招きます。 社労士としては、会社のコスト増はもちろんのこと、多くの会社で雇用保険の手続きに関する課題が大きくなるのではないかと予測しています。 ここからは、上記のリスクを回避するための対応策を解説します。お読みいただき、内製化するか、社労士事務所に依頼を検討するかを判断ください。 2028年10月に向け今からできる、3フェーズごとの先行対応策 雇用保険の加入ライン引き下げは、3年後の「ある日」に突然始まるわけではありません。今すぐ計画的に準備を始めることで、コスト増を上回るメリットに変えることができます。 フェーズ 1:緊急対応(〜2026年後半) 最初の1年間は、コスト増の影響を「見える化」し、管理の基盤を整備する期間です。 ◆人件費増加のインパクト資産(最重要) 現在、週10時間以上20時間未満で働く従業員(パート・アルバイトなど)の人数を特定し、彼らが2028年10月以降に雇用保険に加入した場合の会社負担額の総額をシミュレーションします。 ◆勤怠管理システムの再確認と改修計画 週10時間という新たなラインは、これまでの「20時間」や「30時間」よりも管理がシビアになります。 ◆従業員の意向調査と分類 短時間労働者の間で、今後の働き方に関する意向が二極化することを防ぐため、早期に意向を把握します。 フェーズ 2:中期戦略(〜2027年後半) この期間は、コスト増加を吸収し、人材定着力を高めるための「仕組み」を構築します。 ◆雇用契約書、就業規則の段階的な改定準備 法令改正に合わせた書式の改定を事前に準備します。 ◆短時間労働者向けスキルアップ制度の強化と周知 雇用保険のメリットである「人への投資」を企業側からも積極的に活用します。 ◆生産性向上のためのタスク分析とRPA / IT活用 増加する固定費を、従業員一人当たりの付加価値向上で相殺します。 フェーズ 3:施行直前対応(〜2028年10月) いよいよ最終段階。ここでは社内への周知徹底と、新制度への切り替えを円滑に進めます。 ◆マネジメント層への徹底研修 現場でシフト管理を行う管理職が、新しいルールを正確に理解することが不可欠です。 ◆全短時間労働者への制度説明会の実施 法改正の目的(セーフティネット強化)と、会社側の対応、従業員の手取りへの影響を透明性をもって伝えます。 このように優先順位を決めて進めていけば、3年後に慌てて対策をすることはなくなります。この雇用保険の適用拡大を乗り切り、企業の成長につなげるためには、単なる手続きではない「戦略的なルール整備」を視野に入れる必要があります。 社労士事務所でできる、攻めと守りのルール整備 自社内での対応が難しいときは、社労士事務所を活用ください。 雇用保険は、社会保険と違い適用拡大のスケジュールが確定しています。この猶予期間を最大限に活用し、コスト増を人材定着というメリットに変えるための対策を、今すぐ始めましょう。 プロのアドバイス、受けてみませんか? 週10時間という新たなラインを基準として、経営計画と人材戦略に合致した「攻め」と「守り」のルール構築を法律に沿わせながらお手伝いできるのは、社労士だけです。リソース配分からお手続きまで、総合的なご提案も可能です。インプル社労士事務所に一度ご相談ください。
【社労士解説】2025年10月「撤廃見送り」は安心材料ではない。社労士は次の拡大を見越してどう考えているか
社会保険の適用拡大は、短時間労働者への適用拡大の取り組みの一環として計画されていました。 制度による雇用の歪みを解消し、就業調整といった不公平をなくすことで、保険の有無ではなく純粋な能力や必要性で人材活用ができる社会の実現が目指されています。 しかし特に焦点となっていた「短時間労働者に対する社会保険の規模要件(従業員数)の撤廃」については、2025年1月に適用が当面見送られたという報道がなされました。このニュースを受けて、多くの経営者や人事担当者の皆様は「これで一安心」と感じられたかもしれません。 社労士の立場としては、この社会保険の適用拡大の動きは手放しで「歓迎」できるものではなく、現状の再点検と戦略的な対策を練る猶予期間と捉えるべきだと考えています。 今回は、社会保険労務士として現場で肌身に感じている実態を踏まえ、今後の企業の取るべき対応について解説します。 この記事の監修者 近藤雅哉(社会保険労務士 / インプル社労士事務所 代表)社労士法人で最大35名のマネジメントを経験し、人事コンサルティングに特化した株式会社In-proveを設立。続けてインプル社労士事務所を立ち上げる。人事と労務の両面から中小企業の発展を支えている。 適用拡大の「実態」とは 現在、適用拡大の対象は「従業員数51名以上」の企業にまで広がっています。私たちがこの規模の企業さまと接する中で見えてきたのは、短時間労働者の働き方が二極化しているという実態です。 社労士として、労働者の皆さまは「扶養の範囲内で働きたい」という意向を強く持っていることを痛感しつつ、以下のようなご相談の増加を感じています。 これは皮肉なことに、この改正が「働く時間を減らす」ことにインセンティブが働くという側面を持っていることを示しています。企業側から見ると、せっかく戦力として期待していた人材が、労働時間を減らさざるを得ない状況を生み出しているのです。 企業規模要件の引き下げ、今後はどうなる? 短時間労働者に対する社会保険の適用拡大(週20時間以上、月額8.8万円以上など)における「企業規模要件」は、今後約10年かけて段階的に引き下げられ、最終的にはすべての企業に適用されることが、すでに改正年金法で定められています。 現在「従業員数51名以上」の企業に適用されている規模要件は、以下のスケジュールで段階的に縮小・撤廃される予定です。 施行時期企業規模要件(厚生年金被保険者数)2027年10月36人以上の企業2029年10月21人以上の企業2032年10月11人以上の企業2035年10月10人以下の企業(事実上の規模要件撤廃) つまり、現時点で従業員数が50名以下の企業様も、2027年以降、順次対象に含まれていき、2035年10月には企業規模にかかわらず、週20時間以上の要件を満たす短時間労働者が社会保険の加入対象となります。 また企業規模要件の撤廃と並行して、もう一つの重要な要件である「月額賃金8.8万円以上(年収換算約106万円)」、いわゆる「106万円の壁」についても撤廃の方向性が示されています。 これも改正年金法に盛り込まれており、法律の公布から3年以内に実施される予定です。全国平均の最低賃金が一定水準を超えることを一つの目安として判断されます。この要件が撤廃されると、極端な話、週20時間以上という労働時間要件を満たせば、月額賃金の額にかかわらず社会保険の加入対象となる可能性が高まります。これにより、短時間労働者の社会保険加入のハードルはさらに下がることになります。 対策を打たずに放置したときの、3つのリスク 社会保険の適用拡大を「まだ先の話」「うちの規模には関係ない」と放置することは、経営に直結する深刻なリスクを生み出します。短時間労働者の雇用環境が大きく変わる中で、変化への対応を怠ると、企業は以下の3つの問題に直面するでしょう。 1. 労働力の「不可逆的な流出」リスク 最も避けたいのは、長く活躍してくれた優秀な短時間労働者の流出です。 適用拡大が適用される企業が増えるにつれ、労働者は手取りを維持するために「週20時間未満」での就労を強く求めるようになります。対策を怠り、曖昧なシフト管理や労働時間管理を続けていると、労働者が自身で労働時間を調整し、結果的に戦力として計算していた労働時間が大幅に減少します。 さらに、社会保険加入を避けたい労働者が、最初から適用対象外の「小規模な競合他社」へ流出する可能性も高まります。一度流出した人材を取り戻すのは極めて困難で、採用コストの増大と生産性の低下という不可逆的なダメージとなります。 2. 人件費上昇による「利益圧迫」リスク 適用拡大の要件を満たしたにもかかわらず、手続きやルールの整備を怠ると、法定福利費という「固定費」の予期せぬ増大を引き起こします。 これは、本来であれば従業員への賃上げや設備投資、あるいは新たな事業への「還元できる原資」が減ることを意味するからです。 事前のシミュレーションなしに増加すると、原価計算や価格戦略に大きな狂いが生じます。特に価格転嫁が難しい業界や中小企業では、利益率が圧迫され、結果として正社員への賃上げ原資や新規事業への投資原資が削られることになり、企業の成長戦略そのものが停滞しかねません。 3. 法令違反と「信用失墜」リスク 短時間労働者の社会保険加入は、もはや「任意」ではなく「法令上の義務」です。要件を満たしているにもかかわらず、加入手続きを怠ったり、加入逃れのために意図的に不適切な労働時間管理を行ったりした場合、法令違反となります。 行政による立ち入り検査(調査)が入った場合のリスクは、過去に遡って社会保険料の支払いを命じられるだけではありません。 過去に遡って社会保険へ加入する場合、会社側の手続き不備による遡及加入となるため、対象労働者から保険料を遡って回収することは信頼関係の悪化につながり、難しいという現実があります。その結果、本来は労使折半で負担すべき保険料についても、遡及分は事業主が全額負担するケースが少なくありません。 このようなトラブルは採用市場においても致命的な打撃となり、「法令順守意識の低い会社」というレッテルを貼られ、優秀な人材の確保がさらに困難になる悪循環に陥ります。 経営者・人事責任者が取るべき2つの対策 現在「51名以上」の企業はもちろん、「50名以下」の企業も、将来に備えて先行して以下の対策を行うことをおすすめします。 1. 短時間労働者の「働き方」の再定義 単に法律の要件を満たすだけでなく、短時間労働者の方々が「どう働きたいか」をヒアリングし、自社の採用戦略と合致させる必要があります。 2. ルール整備とシミュレーションによる「見える化」 人件費の上昇を単なるコスト増と捉えるのではなく、事前にシミュレーションし、経営へのインパクトを把握することが重要です。 区分取り組み事例必要性財務計画社会保険料負担増の正確なシミュレーション加入要件を満たす従業員が増えた場合、会社負担額がどれだけ増えるかを具体的に試算する。就業規則適用拡大に伴う雇用契約・賃金規程の改定短時間労働者の「社会保険加入有無」に応じた労働条件、賃金の計算方法、評価方法を明確に定める。生産性向上業務の効率化・DX推進人件費上昇を上回る付加価値を生むため、ルーティン業務の自動化やムダの排除を徹底する。 社労士事務所の活用:ルール整備と円滑な手続きを 社会保険の適用拡大は、貴社にとって単なる手続き上の負担増ではありません。優秀な人材の離脱を防ぎ、労働力を確保するための「戦略的な労務管理」が求められるテーマです。 インプル社労士事務所では、適用拡大による会社側の負担を最小限に抑えつつ、従業員のエンゲージメントを向上させるためのルール整備とお手続きをトータルでサポートします。 「うちは50人以下だからまだ大丈夫」と静観している間に、将来の改正が突如として現実のものとなるかもしれません。 プロのアドバイス、受けてみませんか? まずは、貴社の現在の短時間労働者の状況をお聞かせください。労働時間の背後にはさまざまな事業や社内ルールが理由として存在します。専門家の目線で紐解き、最適な対策案をご提示いたします。インプル社労士事務所に一度ご相談ください
【社労士解説】上がり続ける最低賃金、企業が今すべきこと・中長期的にすべきこと
長らく続いた低成長とデフレ経済からの脱却が叫ばれる中、無視できない経営課題のひとつが「人件費の上昇」、特に「最低賃金の引き上げ」です。 しかし「2020年代に全国平均1,500円」という政府の掲げた目標も、政権交代などの諸事情で明確になっておらず、中小企業の労務担当者には常に最新情報のキャッチアップが求められていきそうです。ただ、最低賃金が今後下がることはありません。政策目標が出てから慌てるのではなく、今から現実として捉え、その現実にどれだけ早く具体的に備えておけるかが、大切な経営判断となりそうです。 この記事の監修者 近藤雅哉(社会保険労務士 / インプル社労士事務所 代表)社労士法人で最大35名のマネジメントを経験し、人事コンサルティングに特化した株式会社In-proveを設立。続けてインプル社労士事務所を立ち上げる。人事と労務の両面から中小企業の発展を支えている。 上がり続ける最低賃金、インプル社労士事務所はどう考える? 世界的なインフレと円安、それに伴う物価高が国民生活を直撃しています。従業員が生活していくために必要不可欠な賃金水準の引き上げは社会的な要請となっており、企業側がこの流れに背を向けることは採用市場からの撤退を意味すると言っても過言ではありません。 しかし社労士としての私は、この最低賃金引き上げの流れを決してネガティブなものと捉えていません。むしろ優秀な人材の確保と経済の活性化のための「先行投資」。未来への布石と考えています。 最低賃金の上昇で実現する4つのこと 最低賃金が上がれば、労働者の生活に安心が生まれます。さらに以下のようなメリットが考えられるでしょう。 1:生活水準の向上と安心の確保(物価高への対応) 働く人々の生活を安定させ、最低限の生活を営める水準を確保することが切実な課題となっているためです。 2:経済の好循環の実現 賃上げを通じて個人消費を喚起し、企業収益の拡大につなげ、それがさらなる賃上げと投資を生むという経済の好循環を実現するためです。 3:人材の確保と定着 深刻な人手不足においては、賃金水準の引き上げが優秀な人材の確保や従業員の意欲向上、および離職率の低下につながると考えられているためです。 4:地域経済の活性化 低い水準にある地域の最低賃金を重点的に引き上げ、地域間の格差を縮小することで地方からの人口流出を防ぎ、地域経済を活性化させる目的もあります。 急な引き上げ、本当に社会のためになるのか? 懸念されているのは、引き上げペースが非常に速いことです。 前政権(石破政権)は2020年代末の2029年度までに1,500円を達成するという目標を掲げましたが、そのためには現在の水準(全国加重平均)から計算すると、年平均で7%台(資料によっては8%)という、過去最高を上回る急速なペースで最低賃金を引き上げ続ける必要があります。 それは中小企業への経営圧迫を生み出し、特に生産性向上や価格転嫁が難しい中小企業や零細企業の経営への影響が大きいでしょう。既に「賃上げは不可能」と回答する企業が約半数に達しているという調査結果もあり、倒産や廃業の増加が懸念されています。その結果、雇用者数の減少や非正規雇用の不安定化など、意図せぬ副作用を引き起こすリスクも否定できません。 政府の支援の流れに乗り、前倒しの対策を しかしこの動きはもう止まりません。先回りの対策が必要です。 政府が目標を定めたら、目標達成に向けた強力な政策資源(予算や税制優遇など)が投入される可能性も高いです。政府による賃上げを可能にするための生産性向上支援や、価格転嫁しやすい環境整備を強化することで、企業側の受け入れ態勢も一気に整っていくでしょう。 そして最低賃金の上昇は、目標達成時まで賃金水準を据え置くことを推奨しているわけではありません。厳しい採用競争と物価高が進行する現在、企業が取るべき戦略は、「待つ」ことではなく、「仕掛ける」ことだからです。 前倒しがもたらす具体的メリット 前倒しの賃金水準の引き上げには、企業にとってもメリットがあります。 1:採用競争での圧倒的優位性 競合他社より50円、100円でも高い時給を提示できる企業は、応募者の目には「選ばれる企業」として映ります。最低賃金の目標水準をいち早くクリアすることは、求人広告費以上の効果を発揮する、最も強力な採用ツールとなります。 2:人材の質の向上と定着率の改善 高い賃金は、単に応募者数を増やすだけでなく、より意欲的で高いスキルを持つ人材を引きつけます。「正当に評価されている」と感じた従業員は仕事へのモチベーションを高め、離職率の低下にも直結します。人件費を上げても、採用コストや教育コストの削減、生産性の向上で十分にペイできるのです。 3:企業ブランドの向上 「従業員を大切にする企業」というイメージは、顧客や取引先からの信頼獲得にも寄与します。企業の健全性、そして未来への投資を惜しまない姿勢を示せるでしょう。 インプル社労士事務所でも、最低賃金についてご相談を受けた際は、上がるのをただ待つ「受け身の姿勢」から脱却し「賃金水準で市場をリードする攻めの姿勢」へと転換してはどうでしょうか、というご提案をしています。 企業がすべきこと それでは具体的なアクションを考えていきましょう。まずは今すぐ取りかかった方がよいことです。 1:緊急対応 目的:人件費上昇のインパクトを把握し、目の前の課題を解決する期限の目安:2026年3月まで 区分取り組み事例詳細(必要性)財務計画仮の1,500円想定の人件費シミュレーション1本当に1,500円レベルまで引き上げられた場合の人件費総額を正確に計算し、利益への影響を「見える化」する。(社労士への相談事項)価格戦略原価計算の見直しと価格転嫁の検討上昇する人件費を織り込み、サービスや製品の適切な価格を再設定する。取引先との価格交渉の準備を始める。生産性ムダ・ムラの徹底排除と業務効率化現状の業務プロセスから、不必要な作業や非効率な工程を洗い出し、マニュアル化やツール導入による削減に着手する。採用定着賃上げの前倒し検討競合よりも優位に立つため、最低賃金目標を待たず、採用力の高い水準(例:地域最高水準)への賃上げを検討し、実行に移す。活用助成金・支援制度の情報収集と活用賃上げや生産性向上、人材育成に関連する助成金(例:業務改善助成金、人材開発支援助成金など)の申請準備を急ぐ。(社労士への相談事項) 現状により、重要性や実現の難易度に差が出るかと思います。一気に進めて失敗するようなことを避けるためにも、一度俯瞰して整理をしてみることをおすすめします。 特に採用定着(賃上げの前倒し検討)の部分では、採用時の時給を上げることにより既存社員と給与額が逆転する可能性があるため、先に既存社員の賃上げに着手する必要が出てきます。社内に人事労務の知見が少ないときは、社会保険労務士にご相談ください。 次は中長期的にやるべきことです。 2:中期戦略 目的:人件費上昇を上回る生産性向上と、付加価値の高い組織基盤を構築する期限の目安:2029年度末(目標達成まで) 区分取り組み事例詳細(必要性)人材戦略成果・貢献度に基づく評価・賃金制度構築単に時給を上げるだけでなく、従業員の能力、スキル、貢献度が正しく反映される公平性の高い賃金・評価制度へ抜本的に見直す。生産性IT・DX推進への戦略的投資投資定型業務の自動化(RPA導入など)やクラウドツール、AIの導入を進め、一人当たりの生産性(付加価値)を向上させる。組織開発人材育成・多能工化の強化賃金アップに見合うスキルを従業員に持たせるため、計画的な教育プログラムを実施。一人で複数の業務をこなせる多能工化を進める。ビジネス高付加価値ビジネスモデルへの転換低価格競争から脱却し、専門性や独自性の高いサービスを提供することで、顧客単価と利益率を向上させる。労働条件柔軟な働き方の導入時短勤務、リモートワークなど、多様な働き方を提供し、優秀な人材の定着を図るとともに、採用の間口を広げる。 中でも、月給者と時給者の計算についてはある程度の専門知識が必要です。月給者と時給者のばらつきを避けるためにも、専門家にご相談ください。 社労士事務所の活用:人件費上昇を成長のエンジンに変えるために 最低賃金上昇への先回り対策で、社労士事務所ができる具体的な支援は主に以下になります。 リアルな人件費シミュレーションの作成 最低賃金の上昇が、貴社の賃金総額、社会保険料、労働保険料といった全費用に与える影響を、具体的なデータに基づいて正確に予測します。「いくらまでなら賃上げできるか」「賃上げによって利益がどれだけ圧迫されるか」を事前に把握でき、経営の意思決定に確信が持てます。 最適な賃金制度・評価制度の構築 単に最低賃金をクリアするだけでなく、貢献度に応じた公平な評価と、納得度の高い賃金制度を設計します。 ・競合他社等と比較したときの優位性が上がるような採用時の賃金を検討・社内との逆転が生じないよう、社内の賃金制度の見直しも実施これらは、法律だけではなくさまざまな企業の事例やトラブル例を知り尽くした専門家だからこそ、適切なアドバイスができる領域でもあります。あわせて以下のような支援も可能です。 ・等級制度や評価制度の見直しで、従業員のやる気とスキルアップを促す仕組みを構築します・パート・アルバイトの戦力化を進めるための正社員登用制度や能力給制度を導入し、優秀な人材の定着を図ります。・「昇給の根拠」を明確化し、従業員エンゲージメントの向上に貢献します。 各種助成金の活用サポート 賃金制度の整備、人材育成、業務効率化など、賃上げに関連して活用できる各種助成金は多数存在します。これらの複雑な制度を活用することで、実質的なコスト負担を軽減し、戦略的な投資を支援します。 プロのアドバイス、受けてみませんか? 賃金制度の構築は、会社の根幹を成す経営戦略です。専門家である社労士の知見を活用し、「賃金アップ=コスト増」ではなく、「戦略的な投資=生産性向上」という等式を成り立たせる制度設計を実現しましょう。インプル社労士事務所に一度ご相談ください。
